注意を向けるエクササイズの手順 ジョン・シャーマン

 
Self-Directed Attention (自分で注意を向ける) というエクササイズについてジョン・シャーマンが最近書いたものを訳して、紹介してきた。

注意のエクササイズが必要な理由
注意を向けるエクササイズとは何なのか

このエクササイズの手順そのものは、ちょうど2年前の記事で紹介済みだったが (回復期の困難の軽減)、名称だけでなく内容も改訂されているようで、訳し直すことにした。基本的なところは変わっていないが、説明が詳しくなり、背景的なことも少し書き加えられている。

原文: Self-Directed Attention Exercise (JustOneLook.org)

== 以下、訳 ==

自分で注意を向けるエクササイズ

自分自身を見るエクササイズを初めてやったあとは、安心や軽やかさ、すべてがうまくいっている感覚を数日、数週間、または数ヶ月経験するかもしれない。そのあと、混乱と心理的困難が生じる期間に入る場合があり、その期間中は古い思考パターン、行動パターンが再発する。

そうした病的な心理構造を根こそぎ滅ぼそうとして対処する必要はまったくない。それはなぜかと言えば、そうした構造はそれに対処しようとして私たちが注ぎ込むエネルギーを通してのみ生き残ることができるからだ。

この困難な期間を通り抜ける方法として最善なのは、「自分で注意を向ける (Self-Directed Attention) エクササイズ」を日課にすることだ。このエクササイズは、精神のあらゆる側面と心理構造を形作ってきた恐れという文脈が崩壊して以降の困難な期間において、自分信頼を深める上できわめて有益となるスキルを育むことを目的としている。

自己信頼を深めるのに何より効果的なのが、注意を思いどおりに動かして焦点を合わせる力を伸ばすという方法だ。このエクササイズは、ひとつの対象に注意を集中し、心のなかにあるかもしれない他のすべてを無視する能力を強化する。それは、注意を自分で動かす力を賢く上手に使う自然な能力を向上させるひとつの手段となる。

はじめは、誰にとってもこのエクササイズは難しいだろうが、それは単に慣れていないからだ。自分の注意を自分でコントロールできるということ自体、ほとんど知られていない。だが保証しよう。あなたにはそれができる。

このエクササイズは一回10分ほど続ける。タイマーをセットして、時間が来たらわかるようにしておくといいだろう。

座って目を閉じ、息が鼻孔を通って出入りする感覚にただ焦点を合わせる。その感覚を感じることだけを10分続ける。息が身体に入ってくるときはその温度が少し低く、出ていくときは少し温かくなっていることに気づくかもしれない。その感覚、鼻孔で感じるその感覚に注意を向け、焦点を合わせる。

非常に重要なのは、呼吸の起こり方をコントロールしたり監視したりは一切しないということだ。注意を向けるこのエクササイズをしているときに過呼吸になるとしたら、それは呼吸を自分でどうにかしようとしているからかもしれない。無意識的に呼吸を早くしたり、遅くしたり、一定のリズムにしたり、息を数えるスピードと一致させたりしようとしている可能性がある。そのようなことをしていると過呼吸になることがあるし、場合によっては血圧が上がることもある。動悸が起こるかもしれない。

こうした問題を解決するには、鼻の感覚に対する集中度合いをやわらげるのがいいだろう。感覚に対する注意は完全に維持しながら、それと同時にリラックスすることは可能だ。呼吸をコントロールしようとしないこと。息が入ってくるとき、出ていくときにそれを数えるだけでいい。ペースを一定にしたり、逆に不規則にしたり、変えようとしたりは一切しない。よくあることだが、呼吸に注意を向けはじめると、呼吸が目立つようになったり、規則的になったり、深くなったりする。コツは、呼吸を見守っていないときに通常起こっている自然な呼吸に気づくことだ。

そのためには、空気が鼻孔を通るときにその空気の流れに注意を向けるのがベストだ。たとえば呼吸時の胸や腹の動きに注意を払うのではなく、空気の流れに注意を向けることによって、自然に呼吸は深くなくなり、比較的浅いものになる。

初回はそれだけをやってみるといいだろう。もし呼吸の感覚を感じられないようだったら、もう少し続けてみること。鼻の先に注意の焦点を合わせる。そのうち感覚が感じられるようになるだろう。

次にやるときは、出ていく息を数えてみる。鼻に入り、鼻から出ていく息の感覚にしっかりと注意の焦点を合わせるようにする。息が出ていくたびに、心のなかで数える。1、2、3…。最初に出ていく息が1、次に出ていく息が2、と続ける。10まで数えること。10まで終わったら、また1に戻る。

息を数えているあいだに注意がどこかに逸れて、呼吸の感覚以外の何か ― 身体の感覚、思考の流れ、音、かゆみ、視界を横切るもの ― に注意が移っていることに気がついたときは、単純に呼吸に注意を戻し、再度1から始める。10まで数えたら、また1に戻る。

たとえば、「こんなエクササイズは馬鹿げてるし、できっこない」とか「こんなの簡単すぎるし、だいたいどんな意味があるんだ」などと考えていることに気づくかもしれない。思考に入ってしまいエクササイズができていないことに気づいたら、やめること。自分を批判したり、「私にはこんなの無理だ」と考えたりしない。ただやめて、注意を息に戻し、1からまた数え始める。評価は無用だ。

うまくできないのはまったく正常だ。落胆しなくていい。頑張りすぎないように。自分に優しく。毎回1から始める。取り組みを続け、諦めないこと。2か3までしか数えられず、毎回やり直すとしても、ちゃんとできている。このエクササイズの目標はできるだけ大きな数まで数えることではないし、まして10まで数えることでもない。それを忘れないでほしい。ポイントは、集中すべき対象 (呼吸) から離れてしまったと気づくこと、鼻孔のなかの息の感覚に注意を意識的に戻すことだ。この自覚的で意図的な動きが重要なのだ。このエクササイズは、ウェイトリフティングや腕立て伏せをして筋肉を鍛えるのと同じようなものとして扱わなくてはならない。簡単にできるようになると10まで数えられるようになるし、もっと頻繁にやってみたくなるかもしれない。

そして、もし注意を逸らすことなく大きな数まで数えられるようになったら、もっと注意を払うこと。自動運転的に数だけ数えながら、注意はどこかに行っているということはよくある。注意を払うこと。落胆しなくてもいい。続けよう。

このエクササイズは1回に10分だけ、1日に1回か2回おこなうようにする。たとえば、起床後と就寝前にするといい。タイマーをセットして、10分たったらわかるようにしておく。

このエクササイズに執着しないようにしよう。一日中いつでも呼吸に注意を向けるように頑張るとか、そういう馬鹿な話ではない。このエクササイズの唯一の目的は、向けたいところに注意を向ける力を育むことだ。

成果はいずれ現れ始める。このエクササイズの本当の恩恵を生活のなかで味わえるようになるまで、そんなにはかからない。練習をしばらく続けたあとで、少し注意していれば、自分と自分の思考のあいだ、自分と自分の感情状態のあいだにわずかなスペースができていることに気づくだろう。それは、思考や感情の正体を見るのに十分なスペースだ。そうしたものはすべて考えられたものだ。自分ではない。その存在を認識し、それからそこに注意を向けるのをやめることができる。やがて、そのスペースは大きくなっていく。

このエクササイズの恩恵を十分に享受するには、まず自分自身を見なければならない。ここに示した手順に従うこと(※)。

== 訳は以上 ==

※ 毎回毎回しつこいが、「自分自身を見る (Look At Yourself)」メソッドをおこなう場合は自己責任で。非常に簡単な方法で、すぐに試してみたくなるかもしれないが、これをやってみたあと、多くの人が混乱を経験し、かなり酷いことになっているという報告がある (僕自身もだいぶ不安定になった)。しかもそれが何年も続く。十分に注意してほしい。

このあとは、注意を向けるエクササイズとマインドフルネスがどのように違うかについてジョンが書いた記事を訳していきたい。 (自分がそこまで関心を持っていないということに気づき、これは取りやめ)

関連記事: ジョン・シャーマンの翻訳記事一覧 (2015年時点)

注意を向けるエクササイズとは何なのか ジョン・シャーマン

 
昨日は、なぜ注意のエクササイズをすべきかについてジョン・シャーマンが書いたブログ記事を訳した。

注意のエクササイズが必要な理由

今日は、このエクササイズに関して今月書かれた説明的な短い文を紹介したい。

原文: What Is Self-Directed Attention? (JustOneLook.org)

== 以下、訳 ==

自分で注意を向けるエクササイズとは何か?

「自分で注意を向ける (Self-Directed Attention)」と呼んでいる簡単なエクササイズの性質と目的に関して、このところ私たちのコミュニティ (訳注: ジョン・シャーマンが主宰するJustOneLookのフォーラム等を指す) では看過できない混乱が生じている。

その責任は私にある。この混乱を解消することができるかどうか、ちょっと書いてみることにしよう。

まず第一に、何をどう考えるとしても、私たちが「自分自身を見る」と呼んでいること、つまり内側を見るということを終えておかなくてはならない。まだしていないならば、今すぐにする必要がある(※)。

「自分自身を見る」メソッドの手順

生に対する恐れこそが、精神的な要素による苦悩のすべてを引き起こしている唯一の真の原因なのだが、一度だけ内側を見ることによって、その生に対する恐れは消滅する。それが完了したあとも、恐れが原因で生じていた精神のあらゆる傷が治るにはある程度の時間がかかる。だが、その回復の期間に何をするとしても、生きていくなかで自分の全般的な態度に注目していれば、恐れとそれが引き起こす症状が軽くなっていることに気づき始めるだろう。

いったん自分自身を見れば、そのあとで何をしてもしなくても、回復のプロセスは意識に上らないレベルで続くことになり、自分が恐れから逃れたことがそのうちにわかるはずだ。

だが、自分の人生に関してできることはもっと沢山ある。自分自身の精神を完全に意識的に自分のものとして取り戻すことができる方法がある。そうした考えに興味があるとしたら、そして最初はいくらか難しく感じられるこの心のエクササイズ (「自分で注意を向ける (Self-Directed Attention)」と呼んでいる) をやってみようと思えるのであれば、この練習をすることで、いま自分を悩ませているほとんどすべてのことに関する受け止め方、心のあり方がゆっくりと変わっていくことだろう。

「自分で注意を向ける」エクササイズの手順

== 訳は以上 ==

※ このメソッドを紹介するときには毎回しつこいくらいに書いているが、メソッドの実行は十分な考慮の上、自己責任で。あまりにも単純なメソッドのため、気軽にやってしまうかもしれないが、少なくない人たちが (僕自身も) その結果としてかなりの混乱や不安定さを経験している。酷いケースではそれが何年も続くらしい。ジョンの言うことが本当であれば、それを補って余りある効能があるはずだが、不安定さが歓迎されないような時期 (就職活動中、新婚、出産前後、闘病中、親しい存在を喪失した直後、責任ある立場で重要なプロジェクトを実行中など) におこなうことは僕としては勧められない。

次は、この注意のエクササイズの手順説明の最新版を訳そうと思う。

関連記事: ジョン・シャーマンの翻訳記事一覧 (2015年時点)

注意のエクササイズが必要な理由 ジョン・シャーマン

 
ジョン・シャーマンの関係はここのところあまり読んでいなかったが、ちょっとチェックしてみると彼はけっこうな量の記事をサイトやブログに書いている。昨日の記事でも少し書いたように、「自分で注意を向ける (Self-Directed Attention)」エクササイズに関するものが特に多い。

実践している人たちからのフィードバックが良好ということなのだろうか。僕自身は全然やっていなかったが (どんな練習もしない主義、というか単にできない) 、そういう記事を読んでみると、彼がこのエクササイズを非常に大切に感じていることがよくわかる。

それに、このエクササイズをやらないとどんな恐ろしいことになるかも書いてあって (そこまで大げさじゃないか)、「早く言ってよ」とは思った。それでも、いま気がついて良かったのは確か。

なので、その最近のいくつかの記事を訳してみたい。エクササイズそのものはかなり単純で、いきなり手順だけを読めば、「なんだ、こんなのか」で終わってしまう人がほとんどのはず。なので、まずは前提や背景を説明する文章をふたつほど紹介しようと思う。最初はこれ。

原文: Why Practice Self-Directed Attention? (JustOneLook.org)

== 以下、訳 ==

JustOneLook (一度見るだけ) のプロセスはふたつのパートで構成されている。そのふたつとは、自分自身を見ること、それから自分で注意を向けるエクササイズだ。

自分自身を見ると精神がリセットされて回復期が始まるが、その期間中、精神はそれ自体を再構築することになる。生そのものに対する恐れに基盤を置かない形で再構築は進む。

二番目の部分、つまり自分で注意を向ける練習は、回復の過程では非常に重要だ。

自分の本当の自己 (自分性) を味わったあとで、自分の注意に対するコントロール力を伸ばす努力をする人は、自己信頼と行動する力を獲得し、さらには何が必要か、必要でないか、重要でないかをどんな状況でも自分で判断する能力に対する自信を手に入れる。そして必要な場合はためらわずに他者に助けを求めることもできるようになる。そうした人たちはこのプロセスに積極的に関与するが、回復期はだいたい2年半ほど続くことが多いようだ。

見ることはしたけれども、自分の注意に対するコントロール力を増強するための努力はしない人たちの場合、回復期は最低5年は続くようだ。そうした人たちにとってはその期間は悲惨なものになることが多く、そしてそのプロセスに意識的に関与していないせいで、精神がそれ自体を再構築しているあいだ、その経験について語れることはほとんどない。なかには、このワークはこれまでにやってきたいろいろなスピリチュアル技法の単なる焼き直しだと考える人もいるようで、実際にはこのメソッドは魔法ではなく理解と自己信頼を提供するものであるのに、彼らはJustOneLook (一度見るだけ) メソッドの無二の効力に気づいていない。

そして、このプロセスについての理解を意識的に深め、私たちの勧めている単純な注意のエクササイズを実行してスキルを高める人たちは、思考の主張を受け入れるか、無視するか、または捨ててしまうかを自分で決められるということがいかに簡単か、そしてどれだけ嬉しいことかに気づくだろう。そして、自分の精神や人生との関わり方のすべてを決めていた恐れという文脈に埋もれてしまっていた力を取り戻すことになる。

注意をうまくコントロールすることができるようになれば、そして恐れという覆いがなくなれば、そうした理解の光はこれからの人生を通じて確実な導きとなるだろう。

== 訳は以上 ==

これが本当なら、僕が「自分自身を見る」メソッドをやったのが2年ちょっと前だから、エクササイズをしていない以上、あと3年くらいは回復期が続くことになる。

まだ続いてたのか、とちょっと嫌な感じにもなるが、逆に注意のエクササイズをすればそれが短くなりそうだし、いいこともありそうだ。

あまりに暑くて早起きしてしまい、早朝から訳してみました。

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