不遇な本、嬉しい展開

 
たまに、自分の訳書でどれが好きかなと考えてみることがある。

「自分の子どものうち誰がお気に入りか」みたいな話で、なかなか難しいし、あまり公言すべきでもないのかもしれない。それと、そのときどきの気分でけっこう入れ替わる。

でも、いつ「ベスト3を選べ」と言われたとしても、必ずそこに入りそうな本がある。J・マシューズの『ただそのままでいるための超簡約指南』だ。

ただそのままでいるための超簡約指南

『超簡約指南』については、出版後にAmazonでかなりネガティブなレビューがいくつも書かれて悲しい思いをしていたのに加えて、最近では中古最低価格1円が定着してしまい、寂しい気持ちも増していた。

ところが、ここしばらく、『超簡約指南』の発売告知記事を訪問する人がなぜか増えている。ずいぶん前の記事なのに。へっ?と思い、書名で検索してみると、なんと3人もの人が最近になってこの本に触れる記事を書いていた。驚いた。

私は今にしか存在しない (Shakti Mandala 若山ゆりこのブログ)

ジェニファー・マシューズの一冊を繰り返し読む (巡礼者のブログ)

自分と経験の境界線?『ただそのままでいるための超簡約指南』再読 (changelog.biz)

もともと少し (だいぶ?) 変わった本だし、万人に受け入れられるとはまったく思っていなかったから、不遇はまあ当然といえば当然だ。それでも、もうちょっと可愛がってもらえたらとは感じていた。

それが、出版から3年もたってから、こうしてきちんと読んでもらえるのはすごく嬉しい。それに、それぞれの記事で引用されている文章が僕の気に入っている部分とかなり重なっていて、そのことも面白くて嬉しい。

とかいいながら、読む人が増えてしまうとボロクソレビューも自動的に増えそうだから、読んでみてくださいとは言わない。Kindle Unlimitedの対象になっていて会員は無料で気軽に読めるけれども、それでも「読んでみて」とは言いたくない。

読まなくていいです。本当に。

この本が好きな人だけがたまーに手にとってパラパラと読み返してくれたら、本当に嬉しい。何度も繰り返し読んでいただいている巡礼者さんのような人がいることを知れたのは、すごく幸せなことだ。

で、ついでと言ってはなんだが、出版後に書かれたありがたい感想もここでいくつか紹介したい。

ただそのままでいるための超簡約指南 (青雀の散歩未知)

Can you hear the sad song ? /『ただそのままでいるための超簡約指南』レビュー (ROAD TO NIRVANA)

穏やかでせつない〜「ただそのままでいるための超簡約指南」を読んで (心の癒しと意識の目覚めのために)

別に良いじゃないか、そのままだって。「ただそのままでいるための超簡約指南」(どらっくすのちゃんぷる~日記。)

改めて目を通すと、じっくりと読んでもらっていて全然不遇じゃないかも!?という気持ちになる。そしてごく薄い本なのに、それぞれの人が異なった要素に焦点を当てているのが楽しい。

***

と、ここまで書いてから、「そういえば Radically Condensed (『超簡約指南』の原著) の新しいレビューが出ているかも」とAmazon.comをチェックして、嬉しい発見をした。なんと、J・マシューズの新刊が出ている! しかも7月と9月に1冊ずつの計2冊。

Truth Is

Inexpressible: Reflections on the Heart of Enlightenment

すぐにKindle版を購入して、2冊とも一気に読んだ。一気に読ませるパワーと勢いがある。『超簡約指南』と似たユーモアも感じられるが、だいぶ違った雰囲気だ。説得や解説をする必要をほとんど感じていないような、今見えているものをそのままの形で伝えているような潔さが印象に残る。

特に Truth Isの方は、「紙の本の長さ」換算で18ページという非常に短いものなのだが、ものすごく惹きつけられる。一気に2回読んだ。ものすごい力強さだ。気づき、自我、観照といったややこしい言葉が使われていないせいもあるのか、どこにもひっかからない。「自我とか気づきとかそういう言葉を使っている本は、本質から目を逸らせるための巧妙な嫌がらせだったのか?」と思ってしまうくらい、これはズドンと入ってくる。

「つぎの本は書かないんですか?」と以前質問したことがあって、そのとき彼女は「うーん、私は書くのがすごく遅いからどうだろう。それに今回の本を出して、これでやりきったという達成感もあるし」という感じだった。それだけに、この出版はまったくの予想外で、すごく嬉しい。

Inexpressibleのほうは、神の王国と愛に関するイエス・キリストの言葉を軸に書かれている。こちらも相当いい。自己編集だけに、ちょっと展開があれ?という部分もわずかにあるけれども、多用される一人称の”I”が普遍的な”I”を感じさせて、何かの聖典を読んでいるような迫力がある。でも深刻さはなく、明るい。

何があったんだろう? ウェブサイトも開設したばかりみたいだから、また連絡してみようかと思う。新刊のなかで気に入った部分を、もしかしたら訳してここで紹介できるかもしれない。ともかく幸せな気分だ。

J・マシューズのウェブサイト In Light

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