山陰経由青森経由中国

 
山陰方面からのおすすめで、「日曜日に読む『荘子』」という本を読んだ。弘前大学の山田史生という先生の書いたもの。教授の本といっても、「日曜日に読む」というだけに気楽な文体だ。

荘子のことは「中国の人?」という程度の認識しかないが、とにかく読んでみた。

そうしたら、ものすごく面白い。正直言って、荘子が何を言っていたのかという点にはそれほど興味はない。でも、この青森のおじさんが言っていることはすごく面白い。

著作権侵害にならない程度に、面白かった部分を少しだけ抜粋してみたい。

 わたしの生をかたちづくっているのは、「が見える・を見る」という知覚であって、「に見える・として見る」という見え方の把握ではない。バラを見ているとき、「バラという見え方において見ている」なんて、見ているわたしが認識することはない。
 夢の見方もそうである。わたしは端的に夢を見る。なにかを夢として見るのではない。覚めているとき、夢は記憶だけれども、眠っているとき、夢は現実なのだ。

 わたしに与えられているのは唯一の「この」世界だけである。なにかを疑うのは勝手だけど、どっちみちこの世界のなかで、わたしは疑わなきゃならない。ところが、この世界だけが与えられた唯一の居場所であるにもかかわらず、「この現実だって夢かも」と疑ってかかるという態度は、この世界がすべてではないということを含意している。この世界を疑うということは、「この世界を超えた、なにか世界そのものを認識できる」といった感覚(というか錯覚)をともなっている。
(中略)
 現実と夢とのあいだの垣根をとっぱらってしまうといったグロテスクな思考実験をやってのけられるような視点を、神ならぬ人間がもつことはできない。この「自分に与えられている唯一の現実を疑うことの当否を、疑っている当人が知ることはできない」と感じるセンスは、けっこう大事だと思う。

 「ある」という世界のあり方について、わたしは言葉で語られるかたちで知っているわけじゃない。「ある」と語ることにおいて、語りの前提としての「ある」自体は、ただちに示されている。知る知らぬの沙汰を超えたところで、わたしは「ある」を知ってしまっている。
 存在や事実をそのようであらしめている「ある」というあり方にとって、そのようでないことはありえない。すでにそのようでないことがかなわないものについて、あえて規定することは不可能であるし、また不必要でもある。

 概念図式とそれに染まらない実在そのものとを、だれも照合することはできない。たとえ一瞬であれ、みずからの概念図式を離れて、その外部に身を置き、無垢の実在そのものを観察することなんてできない。まったくニュートラルな経験を想定しようにも、そのように想定すること自体が、つとになんらかの概念図式によって組織化されてしまっているのだから。
(中略)
 世界のあり方を論じるさいに、おちいりやすい誤りがある。それは一方に世界を組織化するパラメータとしての「概念図式」を配し、他方にその概念図式によって組織化される以前の「無垢な世界」を置いて、それぞれを完結したものとみなして対峙させることである。すなわち「組織化するもの」と「組織化を待つなにか」という二元論をしつらえることである。
(中略)
 図式と内容との二元論を捨てたところで、なにも世界を手放すわけじゃない。首尾よく二元論が放棄されたあとも、世界は見慣れた相貌をあらわしつづける。

「少しだけ」と言いながら、けっこうたくさん書き写してしまった (本当はもっともっとある) 。

池田晶子の著作を読んだときも感じたことだけど、いきなり訪れる「自分脱落体験」などなくても、世界はあるようにあるという認識はいろいろなかたちで起こるんだなと、当たり前のことながら改めて感じた。

山陰のお兄さんと青森のおじさんに感謝。

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山陰経由青森経由中国」への2件のフィードバック

  1. 塩人間様

    いつも楽しく拝見させて頂いております。
    突然のメッセージにて失礼します。

    本日、スピリチュアルTVという番組に
    スピリチュアル翻訳家の山川紘矢さん亜希子さん御夫妻がご出演されていまして、
    その中で紘矢さんが塩人間さんの著書
    「わかっちゃった人たち」をご紹介されていました(*^^*)
    http://spiritual-tv.com/
    既にご存じかも?とも思いましたが
    嬉しくてURL残していきます♪

    梅雨ということもあり時期的に
    心身共に疲れやすくなりますが
    お体くれぐれもご自愛下さいませ。
    これからも塩人間さんのメッセージを
    楽しみにしております☆
    出逢いに感謝!

    コトコ

  2. コトコさん、はじめまして、こんにちは。

    情報どうもありがとうございます。これは知りませんでした。意外なところでいくつかとりあげられていて、面白いなあと思います。

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