素敵なパラドックス

 
翻訳している本のなかで、どうしても意味がつかめない箇所があり、著者(というか話し手)に連絡した。

日本語でもそうだが、話された言葉をそのまま文字にすると、話し手の意図をつかむのが難しくなることはある。さっきラジオを聴いていたら、政府が率先して持続可能社会を作ろうとしている国もあるというゲストのコメントに対し、アナウンサーが「どこに?」と尋ねていた。そこには「そんな国ほんとうにあるんですか? (あなた、またいい加減なこと言ってるんじゃないですか?) 」という疑い深い感じが表れていて、その一言でアナウンサーの性格までうかがえるようだった。だが、文字で「どこに?」と書かれていたら、「え? ほんとう? どこにあるの?」とハイジのように無邪気に質問していると解釈する人もいるだろう。

まあそれはいいとして、そんなわけで意味がつかめなかったのだが、話し手の人からメールで送られてきた解説を見て、やっぱり意味を取り違えていたことが判明した。聞いておいてよかった。

で、その内容なのだが、原文は置いておくとして、なかなか面白い説明だからちょっと紹介してみたい。

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以前の状態に戻るというのは無理です。Kと呼ばれる、他から切り離された何かとの同一化の解消はすでに起こっていて、もう取り消せないんです。

もしKが自分は悟った、解放されたと考えているとしたら、それは自分をKと呼んでいる何らかの分離した寄せ集めの塊とまだ同一化しているということ、解放されることがありえるようなKという個別の存在と同一化しているということなんです。K以外のすべてのものから一種の分離膜によって切り離されているんだと考えている証拠です。でも、Kが何かから切り離されていたことなど一度もなくて、Kというものも、あるものだけがあるというそれの一部です。そして個別にあるという感覚もそれの一部です。つまり、Kはいませんが、Kはいるとも言えるんです。

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ちなみに、この本というのは Everyday Enlightenment というインタビュー本で、2008年にNon-Duality Pressから出版されたもの。出版社に頼んで版権を取得し、自分で翻訳し、あと数ヶ月で形になりそうな状態だ。

ほんとうは版権取得後18ヶ月以内に出版するという契約なのだが、もう過ぎてしまった。もともとが「この本を日本でも紹介しなきゃいけない」という使命感から始めたことではないせいか、ダラダラとしているうちに他の本の翻訳を始めたりして、長くない本なのにこんなにかかっている。

邦題も決めて (いまは秘密) 、デザインをしてもらっている最中なのだが、上に紹介したような内容に興味がある人がどれだけいるのか、ちょっと心配でかなり興味深い。

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