「自分は失敗者だ」という自由

ノンデュアリティカンファレンスの最後は、ジェフ・フォスター (Jeff Foster) とスコット・キロビー (Scott Kiloby) によるワークショップで、テーマは非二元における関係性の可能性というものでした。

アドヴァイタなどの非二元論では、現象は見かけだけのもので実際には永遠にして遍在の絶対的な一があるだけだということになるので、そもそも人間関係や人と社会との関係ということはテーマにはなりづらいものです。

最初に説明されたことは、肉体を抱えてこの世界に存在している限り、本当の実在の認識というものを持っていたとしても、この世界におけるあり方という議論は避けて通れないということでした。

つまり、この世界において実在 (プレゼンス) の認識のみに留まるとすると、自分は誰でもないのだというnobodyという新たなアイデンティティにしがみつくような奇妙な状態にはまる危険もあるということです。それはありのままを否定することにつながり、逆に非二元ではなく二元的なものになります。

と固い話で始まったのですが、最後の数十分は笑いが続くような感じで極めて親密な雰囲気の場になっていました。

印象的だったことをいくつか紹介したいと思います。

  • 絶対を認識したと言っても、現象の世界で他者に何かを投影するということが完璧になくなるわけではない。ただし、投影しているということを見る視点を得ているという違いはある。
  • グルから弟子へのtransmission(伝染、認識の転送)というものは存在しないと言った意味は、グルというものが個人ではなく、自分自身であるということ。自分自身に出会っている。つまりトランスミッションではない。
  • マインドの対象そのものに性質が含まれていると考えると、そのときに自分とその対象は分離する。ラマナ・マハルシの眼差しに特別なものを感じて崇拝するのがその好例。グル自身もそうした投影を許さないことが必要。恋愛においても、美質を持っているのは相手という特定の個人だと考えた瞬間に分離が生まれ苦しみが始まる。
  • 人間関係においても他のものとの関係においても、こうすべきとかこうであるべきだという観念を持っていることは苦しみを生む。例えば自分は優秀なビジネスマンであるはずだと思っていれば、役立たずと言われれば怒りを覚え相手を憎むかもしれない。その考えそのものが苦しみを生んでいる。自分は失敗者だと認めることはアイデンティティからの解放につながり自由になる。湧いてくる思考や感情を自分のところで抱える理由がなくなるからだ。自分が美質と思っていることにこだわっている限りは分離はなくならない。
  • 思考であっても感情であっても、この世界で表現されていることはすべてが無条件の愛から生まれている以上、抑圧すべきものはただのひとつもない。否定的な感情や思考というラベルを貼りたくなったときこそが愛に気づく機会となる。

実のところ、ジェフ・フォスターが何度も繰り返して言っていたことの半分も意味がわかりませんでした。英語の字面の意味そのものは分かるのですが、それが何を指しているのかということが理解できなかったのです。

彼曰く、イギリスでのサットサンで何度も同じことを繰り返し説明していたそうですが、毎回のように参加している人がずいぶん経過した後に「いまやっと意味が分かった」と言っていたことがあったそうです。

さらに、今日は途中でとてつもない恐怖を感じはじめたと言っていた人が二人いて、その意味も僕は全然わからなかったのですが、ジェフが説明したところによると、愛は死であり、愛は個を破壊するということに関係しているということでした。

今日のワークショップには、最近結婚したジェフの奥さんも来ていて聞いていたのですが、どういう接し方をしているのか日常生活を見てみたい気もしました。彼女曰く、ジェフが原理的なアドヴァイタの表現を続けていたときは面倒だったが、いまはそうでもないということで、覚醒したと言ってもいろいろな段階があるんだなということなのかなと思います。

そんな感じで、昨日までの数日で何かが分かっていたような気になっていたものの、結局のところは全然分かっていないということが理解できた一日でした。

これで今回のScience and Nonduality Conference 2010の全日程は終了しました。

以下はこれまでの分の記事です。
1日目 セックス、ドラッグ、アルコール、瞑想
2日目 明快さと優しさ/ 切断と溶解
3日目 アジャシャンティと投影
4日目(1) ルパート・スパイラとフランシス・ルシール
4日目(2) グルの役割
5日目 自然と不自然

広告

「自分は失敗者だ」という自由」への2件のフィードバック

  1. ヒロさん、お疲れさまでした!

    奥さんにかかるとジェフも面倒くさい奴になっちゃうですかね(笑)

    ところで、ジェフが何度も繰り返し言っていた事ってなんなんでしょうかね?

    とにかく、レアなレポートありがとうございました。

    とても読みやすくて面白かったです。

    なんか、ヒロさんが書くと知的な雰囲気が漂いますよね。

  2. kojiさん、読んでいただいてありがとうございます。

    知的な雰囲気というよりも、ついつい賢く見せたいというエゴが働いて、結果的に固くなってしまいます。賢くあることに失敗した!と本気で思えればかなり自由になれる気がします。

    ジェフが繰り返し言っていたことは、探求している主体こそが探求されているものであり既にそれであるということです。これは悟った人は誰もが言っていることだと思いますが、彼はこれを相当いろいろな表現で何度も繰り返すので、印象的でした。

    言葉は分かったような気がするのですが経験としては全く分からないという感じです。

コメントは受け付けていません。